インドネシア人は「コンフロンタシ」をどのように記憶しているのか?:インドネシア-マレーシア関係とスハルト体制崩壊以降の「対立」をめぐる民衆の記憶 ブディアワン(訳・梅垣緑) イントロダクション インドネシア人研究者のリンダ・スナルティは、インドネシアとマレーシアの関係をまるでジェットコースターのようだと表現する(2013, 77)。ときに調和的な関係になり、かと思えば急激に緊張が高まる。さらにドイ…
-
-
【article】アンドレス・ボニファシオ:フィリピンとインドネシアの無産階級の英雄
アンドレス・ボニファシオ:フィリピンとインドネシアの無産階級の英雄 ラモン・ギレルモ(訳・西尾善太) 我々にできる唯一のことは, フィリピン人の「フィリピン万歳」と叫び続ける不断の奮闘によって, 彼らは自由を宣言し, 自由の時代へ至ったとしてフィリピンにいる我々の兄弟と同胞を歓迎することである[“Filipina dan Kita” 1946]. インドネシア共産党のリーダーであるタン・マラカ,…
-
【article】民衆としてのアジア:バンドンからダーバンのあいだ
【編集部】本稿は、2015年7月31日、明治大学でおこなわれた、亜際書院主催の青年会議(東京会議)における、武藤一羊氏による講演記録です。時間があいてしまいましたが、貴重な記録で、雑誌『AMPO』をはじめ、長らくアジアにおける国際民衆連帯運動にかかわってこられた武藤氏ご自身の経験も紹介されながら、民衆と民衆のあいだをむすびなおす契機としての「アジア」を、バンドン会議からダーバン会議へという第三世界…
-
【article】朝鮮半島の平和、南北関係に道を見出すべき
韓国で開催される冬季の平昌オリンピックを前に、南北関係の動きがにわかに活発化しているように見える。一昨年からの「キャンドル革命」以後、韓国では、文在寅新政権の下、前政権時期に冷え込んで不安定化してしまった南北関係について、より積極的な平和的政策を求める声が高まった。しかし、文政権成立後も、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)のミサイルや核兵器の開発・実験は継続され、朝鮮半島は東アジアのみならず、…
-
【event】世界史のなかの韓国ー市民社会の現状と東アジアの課題ー
【亜際書院/インターアジア沖縄思想史ワークショップ】 公開講演会のお知らせです。2016年から17年にかけて、韓国での「キャンドル市民」の動きは、民主化憲法の下、市民の力で政権交代をなしとげました。新たに発足した文政権は、「東アジア責任共同体」を提案し、南北関係の安定と東アジアの平和構築を模索しています。他方、トランプ政権の登場、中国の「一帯一路」の展開に見られる新たなグローバル化等、世界史の「大…
-
【article】東アジアの真の教訓
【編集部:中国の経済的台頭は、さらに一帯一路戦略によって別のディメンションに行こうとしている。これを機に、東アジアの経済を見つめ続けてきたマレーシアのK・S・ジョモは、世界銀行をはじめとする西洋の経済学が、70年代に開始された東アジア経済の発展に注いだ眼を歴史的に点検し、実際は何が起こっていたのかを検証する。】 東アジアの真の教訓 K・S・ジョモ(訳・池上善彦) 東アジアの急速な経済…
-
【report】在日同胞の入国問題、南北の平和的関係を基盤として解いて行かなければならない
【本稿は、2017年5月23日、韓国のオンライン・独立メディア「京郷(キョンヒャン)新聞」に掲載された、趙慶喜・聖公会大学HK教授へのインタビューの日本語訳である。2016年秋、韓国全土で「朴槿恵退陣」を求めるキャンドルデモが起こり、5月には大統領選挙がおこなわれ、文在寅新大統領が誕生した。そうした韓国の大きな変化のなかで、在日朝鮮人の歴史的経験から、南北関係の平和的基盤について語る。】 在日同胞…
-
【article】キャンドルデモ以後の韓国社会の展望と社会運動
【編集部】本稿は、2017年4月20日、ソウルの細橋(セギョ)研究所でおこなわれたシンポジウム「キャンドルと韓国社会」における、パク・レグン(4・16連帯共同代表/人権財団サラム所長)による報告「キャンドルデモ以後の韓国社会の展望と社会運動」の日本語訳である。 キャンドルデモ以後の韓国社会の展望と社会運動 パク・レグン (4・16連帯共同代表/人権財団サラム所長) 1.…
-
【article】キャンドルデモが変えたことと変えなければならないこと
【編集部】本稿は、2017年4月20日、ソウルの細橋(セギョ)研究所でおこなわれたシンポジウム「キャンドルと韓国社会」における、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長の報告である。2016年秋、韓国全土で「朴槿恵退陣」を求めるキャンドルデモが起こり、ソウルでは100万人を超える規模にまで膨れあがったとき、警察庁長官が「デモに放水車使用もあり得る」と発言した。そのちょうど一年前の2015年11月、民衆…
-
【event】明治大学大学院教養デザイン研究科特定課題講座「風に吹かれて」
イベントのご紹介です。明治大学大学院教養デザイン研究科では、特定課題講座「風にふかれて テントは世界を包む」2017のイベントを開催します。アジアの歴史と記憶にフォーカスしたさまざまな企画が盛り込まれています。本企画は、台湾で発明された「葬式用テント」を転用した空間を、明治大学和泉キャンパス内に設置し、約一週間の教育実験の広場とします。5月29日から6月3日、いずれも午後6時半開場、午後7時スター…
-
【article】「キャンドル民主主義」がもたらした新しい政府にふさわしい南北関係のアプローチを
【編集部】2017年5月9日の韓国大統領選挙を目前に、韓国では、韓国政治と「キャンドル・デモ」以後の民主主義のあり方に関するさまざまな議論が展開されている。ここに紹介する、イ・スンファン(市民平和フォーラム代表)による「『キャンドル民主主義』がもたらした新しい政府にふさわしい南北関係のアプローチ」は、とくに南北関係の文脈に焦点をあて、今後の課題を探ったものである(『創批週刊論評』2017年4月19…
-
【current report】韓国・キャンドルが燃えるときだけできること
【編集部】昨年から今年にかけて、韓国全土でおこなわれた、朴槿恵退陣を求めたキャンドル・デモ。朴大統領は退陣し、さらに大統領選挙を控えた韓国では、2016年から17年の、いわば「市民革命」的状況について、87年の「民主化」以来の民主主義の進化の課題がさまざまなかたちで議論されているが、日本では、そうした議論はほとんど知られることがない。以下に紹介するのは、韓国の雑誌『ハンギョレ21』のインターネット…
-
【article】メーデーのバンダリズム、資本主義のバンダリズム
【編集部】クチン・リンバによる「別の世界を夢見る仲間に会いに行き、そこで出会った「生きているアート」の話:インドネシアとマレーシアを歩く」の第5話をお届けいたします。第5話のテーマは「メーデーのバンダリズム、資本主義のバンダリズム」です。「メーデーの祝日には、長時間労働によって人間らしい生活時間を失ってはいけない、奴隷になりたくない、というメッセージがストリートに出現する。」 第5話…
-
【article】「時勢に遇わず」 台湾人作家・陳映真の文学
【編集部】今年7月23日に行われた「『戒厳令下の文学:台湾作家・陳映真文集』出版記念シンポジウム」の特別ゲストとして、台湾からいらして下さった趙剛さん。趙剛さんは現在台湾の東海大学で教えられていて、社会評論、陳映真論など積極的な言論活動を展開しています。以下は、当日の趙剛さんのご講演の全文の日本語訳です。 「時勢に…
-
【article】開発の荒波に消えたわたしの町への贈り物:瓦礫、記憶、夢
【編集部】クチン・リンバの連載「別の世界を夢見る仲間に会いに行き、そこで出会った「生きているアート」の話」その第4話をお届けいたします。「開発の荒波に消えたわたしの町への贈り物ー瓦礫、記憶、夢」と題して、アジア・アフリカ会議50周年にわくインドネシア・バンドンの町の深部へと向かいます。 第4話 開発の荒波に消えたわたしの町への贈り物:瓦礫、記憶、夢 クチン・リンバ ■パスパティ公園の…
-
【article】60年目のアジア・アフリカ会議:スケートパークのスカルノとマンデラ
【編集部】クチン・リンバによる連載「別の世界を夢見る仲間に会いに行き、そこで出会った「生きているアート」の話」その第3話をお届けいたします。アジア・アフリカ会議60周年にわくインドネシア・バンドンの町を取材します。 60年目のアジア・アフリカ会議:スケートパークのスカルノとマンデラ クチン・リンバ 1955年のアジア・アフリカ会議の開催地として世界史に名を残すバンドン。昨年4月、バン…
-
【event】『戒厳令下の文学―台湾作家・陳映真文集』出版記念シンポジウム
台湾を代表する作家である陳映真の初めての小説集『戒厳令下の文学:台湾作家・陳映真文集』(せりか書房)が出版されました。これを機に、台湾から、近年精力的に陳映真論を展開し、社会的発言も活発に行っている趙剛さんをお招きして、陳映真文学の意義について討論します。 陳映真のプロフィール:一九三七年台湾竹南に生まれ、一九五九年に第一作目の小説『麺屋台』でデビュー。一九六八年逮捕され緑島に送られるも、一九七五…
-
【article】この日をつかめ ― バンドン、歴史的不平等そして開発目標
【2015年4月、中国の杭州で「バンドン会議60周年」のシンポジウムが亜際書院主催で行われた。これはそこでのK・S・ジョモの発表である。K・S・ジョモは1952年マレーシアに生まれの経済学者で、マレーシアでは批判的知識人としてマレーシアの経済、社会構造を分析した本を何冊も出版し、2005年からは国連食糧農業機関などを初めとした国際研究機関に勤務し、第三世界、特に東南アジアの開発経済、政治の専門家と…
-
【current report】朝鮮半島情勢と東アジア
2015年から16年にかけて、「核実験」と「ロケット」実験、また、開城工業団地の閉鎖から米韓合同演習へと、朝鮮半島情勢は急激に変化しています。また、韓国は4月の総選挙を控えています。MAT NT Journalでは、これまでも台湾や香港、日本、沖縄などで現在的に起こっている時事的な課題に関する論評やコメント、声明などを紹介してきましたが、ここでは、去る2月18日に出された二つの声明の日本語訳を掲載…
-
【article】バンドンの後藤健二:Kampret Syndicateの追悼ステンシル
【編集部】クチン・リンバの連載「別の世界を夢見る仲間たちに会いに行こうと旅に出て、そこで出会った「生きているアート」の話:インドネシア、マレーシアを歩く」その第2回をお届けいたします。現在、アジアのアートは実に多様な展開を見せている。それはハイ・アートの世界だけではありません。ストリートで、コミュニティで、現実の生活に根ざした、若者による多彩な活動が展開されています。その中でも我々にとってなじみの…